ゴキブリハンター


時は西暦200X年。
俺は、ゴキブリハンターになっていた。
ゴキブリが進化したのだ。
やつら、頭がよくなった。
簡単に毒物を食べなくなったし、殺虫スプレーなども抗体ができたのか、それほどきかなくなった。
そしてなにより、やつらは群れをなすようになった。
それくらいは、昔からそうなのだろうが、その数か半端ではない。千や二千、下手すりゃ万単位の群れは、そこらの主婦に対抗できるはずもなかった。
ゴキブリハンターという職業ができたのは、そういった必然性によるものだった。

ある時、俺たちゴキブリハンターに一軒家に住む主婦から依頼が来た。
俺は、まだ新人でこの依頼が初陣になる。
チームの先輩たちは俺のことを『ルーキー』と呼ぶ。
「おい。ルーキー。今日はお前の初陣だしっかりやれよ。」
「はい!頑張ります!」
仕事に向かう車のなかでそんなやり取りがあった。

着いた一軒家は普通の家。
依頼主の話によると、2階の子供部屋がやつら(ゴキブリ)の巣窟となってしまったらしい。
いよいよ俺たちは、ゴーストバスターズを彷彿とさせるような仰々しい装備品をつけ家に乗り込んだ。
その問題の部屋に突入する前に、隊長が二人ばかりを斥候に送った。(1チーム5人編成)
しばらくしてその二人が青ざめた顔をして戻ってきた。
ゴキブリの群れには必ずリーダーがいる。
どの程度の数を統率できるかは、そのゴキブリの格による。
どうやら、群れのリーダーは最高クラスのようだ。隊長をはじめチーム全員の顔がきゅっと引き締まる。

「突入!!」
隊長のけたたましい声と同時に俺たちは部屋に踏み込む。そこには、おびただしい数のゴキブリが、壁にも天井にもいたるところにひしめいていた。
隊長:「リーダーを探せ!」
どんなに数の多い群れでも、リーダーさえ倒してしまえば後はどうにでもなる。
俺は必死に探した。その時、カーテンレールを走る一匹のゴキブリがいた。
『見つけた!あいつがリーダーだ!』
俺はそう心の中で叫ぶと同時に、武器を構えた。
その時俺は『ゴキブリハントなんて以外に簡単だ』なんて思った。
しかし、俺は失念していた。
追い詰められたゴキブリは自分の方に向かって飛んでくる。
そいつも当然のごとく俺に向かって飛んできた。しかも、あろうことか俺の体に張り付き、体をつたって首まで這い登り、うなじの部分から服の中へ進入してきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
なんていうだせぇ悲鳴をあげて起きた。
最悪の目覚めだった。
ゴキブリが侵入してくる時のリアルな感触は、Tシャツのタグが肌に触れるものだった。
もぅ!マジ嫌い!!ゴキブリ最悪!!



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